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2007年1月21日 (日)

ワクチンの学割、家族割!?

Vaccine

年末になるまで暖冬ぎみだったせいか、私の住む県ではいまだインフルエンザは流行と言うほどの広がりは見せていません。先週ようやくA型の方が2人出ましたが、同じ週にワクチンを打った方もこの分なら抗体ができあがるまでまず大丈夫でしょう。


そのインフルエンザワクチンの接種料ですが、私の診療所ではワクチンの個別接種が始まった頃からずっと大人も子供も3,150円です。大分前のことでもう記憶が定かではありませんが、確か市の医師会に問い合わせて大体どこもこのくらいの値段でしていると聞いて決めたように思います。


以来十数年、ずっとこの価格できました。ところが最近ある患者さんから「病院によってインフルエンザワクチンの値段が違うけど上等なワクチンは高いのか」と聞かれました。あわてて調べてみると2000円台でしているところが結構あり、「学割」あり「家族割り」ありとまるで携帯電話の料金設定のような状態を呈していました。さらには別な患者さんから、東京近郊の県に住んでいる子供さんのかかっている病院ではそこに通院している人は3000円、そうでない人は5000円という料金体系になっているそうだと聞かされ本当に驚きました。


日頃薬の原価とか、薬価差とか利益についてはあまり深く考えない(というよりどうしてもそっちの方を考えることを卑しいと考えてしまう)私ですが、少し考えてみざるを得ませんでした。まず薬の卸さんの請求書を見るとインフルエンザHAワクチン1ml入り(つまり大人二人分)が1700円弱の単価でした。一人分が800円少し!、ここで何たる暴利を貪っているのかと思われる方もいるかもしれません。でもワクチンは接種を希望される方に手渡しして、自宅で好きなように使用していただく物ではありません。注射しても大丈夫かどうか十分な問診と診察をした上で接種することになっています。重篤な副作用が出現するのは接種後30分以内が殆どですのでこの間は院内で様子を見ます。健康診断の場合もそうですが、自由診療(健康保険を使えない医療行為のこと)の場合保険診療の点数(すべての医療行為に対して点数がついています)を使って請求額を算出しています。他に医療行為の金銭的価値を計る尺度を持ち合わせていないからです。するとインフルエンザワクチン接種の場合先ほどの800円に、診察料(初診料)の270点と皮内・皮下及び筋肉内注射手技料の18点を加算(1点は10円)すると合計で3700円くらいになりますから妥当なところでしょうか。


一方別な見方をすると、ワクチンそのものは800円そこそこな訳ですからそれだけを考えると1000円の接種料でも元は取れると言うことでしょう。いろいろな料金体系を工夫している医療機関を非難するつもりは毛頭ありません。接種を受ける方にとっては安いに越したことはないでしょう。ただ、「すべての人を等しくインフルエンザの脅威から守りたい」という医療の原点みたいな気持ちが失われ、「当院なら御予約いただければ500円の割引サービスをただいま実施中です。」なんていう市場原理丸出しの競争になったら悲しいなと思った次第です。


念のために言っておきますが、私自身は皆が納得して決められるのであれば1000円の接種料でもかまわないと思っています。その方がより多くの人々が接種を希望するでしょう(でも談合と言われるのかな?)。医療に競争はなじまないと思うのですが…。

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コメント

panta さん,トラックバックをども。m(__)m
そいえば,うちの病院(自治体の僻地にある中核病院)でも確か2000円+5%税でやってた記憶がありますね。内科の主治医からはまた肺炎起こされて救急へ来られたらたまらんから射っとけと,半分命令されて射ちました(笑)

panta さんの言われる通り,開業医に関して言えばかなり「医療格差」が生じているようです。うちの病院はもともと救急で運ばれて来たり,開業医がお手上げになって紹介状を持って即入院というタイプの病院ですので,その手の「公共料金」はかなり安めに設定してあるようです。それでもやはり山奥の過疎の町などでは年金生活の老人がワクチン接種を受けずにインフルエンザとなり,うちの病院へ搬送されて来る例があるようです。

逆に言うと panta さんが示された東京の例なんかはもろに「貧乏人は麦を食え」ならぬ「朕はタラフク喰ってるぞ,貧乏人は風邪ひいて死ね,御名御爾」(50年安保の時に親父が全学連で書いたプラカードのもじり)に近いような気がしますね。

まさに panta さんの言われる通り「医療に競争はなじまない」! 私もそのように医進課程の医学概論の際に習った覚えがあります。

そいえば,昨年,トラックバックした「去年買い集めたタミフルはODA行きかな(笑)」という記事を書いて,タミフルカプセルとタミフルドライシロップとリレンザブリスターの最新の薬価比較をして,ネットゴキから多大な攻撃を受けたものですけど(自爆)

たまたま調剤薬局に来てた卸さんに聞くと,タミフルカプセルの在庫は山ほどあって,その日のうちに配達できますよとのこと。昨年ラムズフェムド氏から大量にお買いあげしたんだもんね,そりゃそーだろな。でも,肝心の調剤薬局は慎重でして,在庫は厚労省に命令された分しか置いてないというのがホンネだそうです。

投稿: kaetzchen | 2007年1月22日 (月) 12時39分

kaetzchenさん、こんばんは。


いつもコメント有り難うございます。今回とりあげたワクチンの値段の付け方には政府が推し進めようとしている”医療改革”が二重写しに見えてきて、嫌な感じがしたので記事にしてみました。もちろん「医学」には競争は大切で大学や研究所の先生方にはどんどん競争して医学の進歩に貢献してもらいたいと思っています。

投稿: panta | 2007年1月23日 (火) 21時10分

申し訳ありません。m(_ _)m
間違ってpantaさんのTBを削除してしまいました。
もう一度送って頂ければ、幸いです。

投稿: とむ丸 | 2007年1月25日 (木) 15時59分

私のところは内科専門でいはないので、私と職員のみ予防接種をしています。
予防接種とはいえ、副反応の可能性もあり、アレルギー性のショックが起きても、何の設備もないクリニックでは怖くて出来ません。
予防接種の必要性と、効果対費用を考えると保険適応でも問題ないと思いますけどね。

投稿: なかまた | 2007年1月25日 (木) 23時04分

なかまたさん、おはようございます。
仰るとおり注射についてはショックがいつも念頭にあります。さいわい他のワクチンも含めて予防接種についてはこの20年近く一度も経験はしていないのですが、事前の十分な問診と注射後30分の院内での経過観察(患者さんには嫌がられますが)は怠らないようにしています。
ワクチンの効果については、インフルエンザの患者さんに咳やくしゃみを真正面から浴びせられるこの私がこの20年近く一度もやられてないことから、絶大な信頼を寄せています。(もっとも私は毎年2回接種しています。また接種を受けていても罹る方がおられるのも事実です。)
予防医学云々というなら是非とも保険適応にしてもらいたいものです。

投稿: panta | 2007年1月26日 (金) 08時25分

なかまたさんも指摘されているように,インフルエンザなどのワクチン注射には常にショックの可能性があるので,不特定多数の人々に射つのには不安があります。

小学生の頃,ツベルクリンやらBCGなどを回し射ちしてて,他人の体液が混ざったらどうするんですかと校医に苦情を言ったら,なるほど,それもそうだなと(笑) 何とも大らかな時代でしたねぇ。

panta さんが年2回接種してることは尊敬に値します。私なんかいいかげんで,夏に射ったからいいだろ,なんて感じで(笑) ワクチンの型が定まらないのなら,年2回,異なる型のワクチンを射ち,それを保険適応にすれば,かなりの予防効果が出るのではないかと私も思いますね。

投稿: kaetzchen | 2007年1月26日 (金) 22時08分

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