ハケンのピンはね
私も妻も忙しくゆっくりテレビを見る暇もないので、見たい番組(決して私のではなく妻の、「見たい番組」になってしまいますが…)はビデオに録画しておき、食事時に何回かに分けて見ることになります。最近の妻のお気に入りは「ハケンの品格」です。妻に言わせると面白くてたまらないそうです。
”スーパー派遣”と言われる主人公が、その派遣の仕事とは直接的にはあまり関係のなさそうな様々な事態を見事に解決して会社の危機を救うという荒唐無稽なストーリーですが、そのコミカルな演出の面白さや番組終盤のお約束的な主人公の八面六臂の大活躍にカタルシスを感じて受けているのでしょう。
それだけなら別にいつものように私はテレビの画面には目を向けず、黙々と食事をしているだけなのですが、どうもこの番組には胡散臭さを感じてしまいます。番組の冒頭で「驕る正社員は久しからず」というナレーションを毎回聞かされ、内容的にも正社員が有ること無いことで派遣社員を理不尽にいじめ、否が応にも視聴者は派遣社員に感情移入させられてしまいます。派遣会社のマネージャーは人間味のある話のわかった人に描かれていたり、ある回では嘱託の老社員に対して「あの人はただ机に座っているだけで私たちの倍のお給料を貰っている」という台詞が出てきたりと、派遣社員の置かれた不公平な状況に対する派遣会社や派遣先企業の責任を、無能な正社員たちの横暴さに巧みに単純化してすり替えています。またやたらと”スキル”という言葉が使われていますが、どうもエクセルが使えるとか、何とか試験の何級を持っているとかの資格のことを言っているようです。職人さんの”匠の技”に較べるべくもないのでカタカナ言葉を使っているのかと思いましたが、何のことはない番組スポンサーに”スキルアップ”の資格取得の通信教育会社が入っています。もちろんいわゆる人材派遣会社もしっかりスポンサーを務めており、この番組の企図するものが見えてきます。
妻はそんな見方をしたら面白くないと言いますが、うちの若い職員もこの番組をとても楽しみにしているそうで、「派遣がかっこいいのに、それを正社員がいじめるんですよ。」と言っていたとか…。今のところ送り手側の目論みは大成功のようです。
厚化粧をたっぷりして素顔を隠し、派手できわどい衣装を身につけて人目を引かせるのは最近の流行のようです。でもいくら「品格」とか「スキル」とかいう言葉をちりばめ、”スーパー派遣”に荒唐無稽な大活躍をさせても物事の本質というものは昔も今も変わるわけがありません。「労働者の派遣」というとすぐに「手配師」とか「ピンはね」とかいう言葉が浮かんできてしまう古い人間の私にはついて行けない番組です。
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