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2007年2月の4件の記事

2007年2月27日 (火)

ハケンのピンはね

Temp

私も妻も忙しくゆっくりテレビを見る暇もないので、見たい番組(決して私のではなく妻の、「見たい番組」になってしまいますが…)はビデオに録画しておき、食事時に何回かに分けて見ることになります。最近の妻のお気に入りは「ハケンの品格」です。妻に言わせると面白くてたまらないそうです。
”スーパー派遣”と言われる主人公が、その派遣の仕事とは直接的にはあまり関係のなさそうな様々な事態を見事に解決して会社の危機を救うという荒唐無稽なストーリーですが、そのコミカルな演出の面白さや番組終盤のお約束的な主人公の八面六臂の大活躍にカタルシスを感じて受けているのでしょう。
それだけなら別にいつものように私はテレビの画面には目を向けず、黙々と食事をしているだけなのですが、どうもこの番組には胡散臭さを感じてしまいます。番組の冒頭で「驕る正社員は久しからず」というナレーションを毎回聞かされ、内容的にも正社員が有ること無いことで派遣社員を理不尽にいじめ、否が応にも視聴者は派遣社員に感情移入させられてしまいます。派遣会社のマネージャーは人間味のある話のわかった人に描かれていたり、ある回では嘱託の老社員に対して「あの人はただ机に座っているだけで私たちの倍のお給料を貰っている」という台詞が出てきたりと、派遣社員の置かれた不公平な状況に対する派遣会社や派遣先企業の責任を、無能な正社員たちの横暴さに巧みに単純化してすり替えています。またやたらと”スキル”という言葉が使われていますが、どうもエクセルが使えるとか、何とか試験の何級を持っているとかの資格のことを言っているようです。職人さんの”匠の技”に較べるべくもないのでカタカナ言葉を使っているのかと思いましたが、何のことはない番組スポンサーに”スキルアップ”の資格取得の通信教育会社が入っています。もちろんいわゆる人材派遣会社もしっかりスポンサーを務めており、この番組の企図するものが見えてきます。

Human

妻はそんな見方をしたら面白くないと言いますが、うちの若い職員もこの番組をとても楽しみにしているそうで、「派遣がかっこいいのに、それを正社員がいじめるんですよ。」と言っていたとか…。今のところ送り手側の目論みは大成功のようです。
厚化粧をたっぷりして素顔を隠し、派手できわどい衣装を身につけて人目を引かせるのは最近の流行のようです。でもいくら「品格」とか「スキル」とかいう言葉をちりばめ、”スーパー派遣”に荒唐無稽な大活躍をさせても物事の本質というものは昔も今も変わるわけがありません。「労働者の派遣」というとすぐに「手配師」とか「ピンはね」とかいう言葉が浮かんできてしまう古い人間の私にはついて行けない番組です。

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2007年2月15日 (木)

鋼鉄の夢

Ts250suzu

子供がバイクの免許を取りました。やがて乗り始めるでしょう。親としてはとても心配ですが、かくいう私も学生の頃から結婚するまでバイクが生活の一部を占めていました。大学の時免許を取って、初めて乗ったバイクが中古で買ったハスラーの125ccでした。小柄な私にとって人を見おろす高い視点はちょっとした優越感に浸れましたし、少しばかりの段差など平気で乗り越える機動性は行動範囲をとても広げてくれました。どこへ行くにも、どんな場所でもバイクに乗っていることが多い学生時代でした。

Z400ltd2b_1

研修医になってから安月給とバイト代をつぎ込んで念願の400ccの中型バイク(カワサキZ400LTD)を買いました。忙しくてなかなか旅にも出られない毎日でしたが、それでも県内のあちこちを一人で走り回り、何百kmも離れた遠くの県まで走った思い出もあります。つづらおれの峠道を駆け抜けるときは、ライダーズハイというのでしょうか、微妙な力学的バランスに身を任せていると、”このままカーブを突き抜けて空に飛び上がって行ってしまってもいいな”というような気持ちになることが度々ありました。子供の嬉々とした姿を見ていると、正直また乗りたくなってきています。

オートバイ、オートバイ、俺の鋼鉄の夢、走ってゆけ…

それに引き替え、せっかく手に入れたネットという宝箱の隅っこで、漱石の草枕ではないですが、「屁をひった、屁をひった」と言い合うことの何と愚かしく、矮小なことでしょう。自分がお金を出して買い取ったものでもないので、コメントに手を加えるのには抵抗がありましたが、私のコメント欄をコントロールできるのは私しかいないと決心して、これからは他人を誹謗・中傷するようなコメントは、誰のものであろうと私の勝手な判断で削除もしくは編集させていただくことにしました。

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2007年2月 8日 (木)

今年の流行語大賞決定!

Ryukogo

まだ2月ですが、今年の流行語大賞決定です。もちろん私個人のですが。
”「右」も「左」もない。オレは「下」や”
喜八さんのところで紹介されている名言です。何かにつけつぶやいているこの頃です。喜八さんが言われているように本当に心の琴線に触れる、何か今の状況にぴったりの言葉です。
私の右翼が吠える時左ということを書いていてどうもすっきりしないものを感じていたのですが、このフレーズにふれて目から鱗が落ちました。今必要なのはぐるっと一周すれば結局同じも同然の「右、左」ではなく、どこまでもきりのない「上、下」の位置関係で物事を捉え、常に「下」の視点から世の中を見ることなのかと思います。
生活保護など無くしてしまえと言う人は、保護を受ける人を自分より「下」と見ているから、彼らが少しでも贅沢をすると腹が立って非難するのでしょうし、中国や韓国を目の敵にする「ネット”右翼”(真の憂国者に申し訳ない、”ネット上様”と呼んだ方がよいのかな?)」と称する人達は、やはりこの両国を「下」とみているのだと思います。いじめを冷ややかに傍観する子供達も、いじめられている子よりは自分は「上」だという意識もはたらいているのでしょう。
病気や災害、戦争や貧困など様々な理由で「下」の位置に追いやられている人達の立場に立って、その視点から物事を考えると言うことは、とても難しい事だと思います。かくいう私も口先だけになっていることばかりで、反省しきりです。ただ自分は「上」だとか、自分より「下」がいてよかったとか恥ずかしげもなく思う人間にだけはなりたくないと思っています。

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2007年2月 3日 (土)

ニュース声優

News_pic_1

最近ニュースを見ていてとても違和感を感じることがあります。事件の被疑者などの供述(当然実際に聞いたわけではなく警察や検察から流されたものだと思いますが、)を声優まがいの声色で報じていることです。一昔前からの音声を変調して流すインタビューにもかなりいかがわしさを覚えていましたが、それとは別のあざとさを感じてしまいます。


音声の変調は発言者の特定をしにくくして、より真実を述べて貰おうと言うことなのでしょうが、あの甲高い声やモゴモゴ声での話しが始まると、とたんに私の中でリアリティが急降下です。どちらの声もよく似た声質の人を知っているので、まるでその人達が喋っているようにしか聞こえず、話の内容はそっちのけになってしまうことがよくあります。平気でやらせをさせるテレビ業界です、音声を変えたらやらせ発言をする人もより敷居が低くなることでしょう。


ただ音声を変調しても、まだ微妙な声の震えや、間の置き方から、発言者の怒り、悲しみ、あざけり、喜び、憎しみなどの感情が垣間見え、我々は彼らの人となりを推測できます。ところが冒頭に書いたような、台詞を他人が吹き替えよろしく読み上げるやり方は脚色以外の何物でもありません。実際、被疑者の供述はさも性悪で陰気な感じに読み上げられます。聞いた人の頭の中には実際とは異なる”犯人”像ができあがってしまうでしょう。もうテレビや映画の悪役と同じです。


この声優まがいのナレーション、最近はNHKのニュースにまでも採用されています。それどころか先日は六カ国協議を伝える7時のニュースで、北朝鮮の金桂冠外務次官の発言をこれでやり、それに対するアメリカのヒル国務次官補の発言は従来通りアナウンサーが読み上げるという応用編になっていたのには参りました。


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