北朝鮮が攻めてきたら…
「そんなこと言ったってもし北朝鮮が攻めてきたらどうするの?」
よく使われる殺し文句です。早ければ3年後にも行われる改憲の是非を問う国民投票にむけて、周囲の身近な人達に護憲の大切さを訴え、理解と支持を得るために私たちができる範囲のささやかな働きかけをする場合でも、必ず誰かから発せられる質問でしょう。さて皆さんはどう答えられるでしょうか。
今週号のマガジン9条〜この人に聞きたいで、劇作家の永井愛さんが答えてくれています。実際には「非戦を選ぶ演劇人の会」による「ピースリーディング」の第10回として上演された、永井さん脚本・演出の「9条は守りたいのに口ベタなあなたへ…」で劇中の登場人物が答えています。その辺の所を少し長くなりますが、マガジン9条から引用させていただきます。(以下引用)
永井改憲派の論理って、すごくわかりやすいんですよね。「北朝鮮が攻めてきたらどうするんだ」「軍隊がないと国際貢献できない」…それに対して護憲派というのは、9条を守るということはもう自分の中で検証する必要がなくなってしまっていて、そういう改憲派の具体的な問いに対して答えることができなかったりする。それに、割と心優しき人が多くて(笑)、攻撃的に反論もできなくて口ごもりがちだったりするし。そういう護憲派に、けんか腰ではなく、「でも、こういう見方もあるんですよ」と、会話をしてもらうきっかけ、材料を提供するのはどうだろうと。
そのアイデアに基づいて、ゼロから自分では考えられませんから、いろんな方の発言が載った資料を使わせていただいて、台詞にしていきました。「あの人はこう言っている、この人はこう言っている」という、いわば「いいとこ取り」です。
編集部たしかに、「9条は守りたいのに〜」の中には、そういった「反論」の材料になりそうな場面がたくさん出てきましたね。
たとえば、主人公が通っているパッチワーク教室の先生は護憲派なんだけれど、生徒のひとりに「国が戦力を持つのは、強盗から身を守るために家に戸締まりをするようなもの。非武装中立を主張するなら、家のセキュリティシステムを解除して、鍵をかけるのもやめないとおかしい」と言われて反論できず、しょうがないから鍵を閉めずに暮らし始めて、あまりの不安のために病気になってしまう。主人公がそれを夫に話したところ、夫は「家の戸締まりは外からの侵入を防ぐだけだが、武力は人を殺す。家の戸締まりをいくら厳重にしても周囲には不安を与えないけれど、軍備を増強すれば周囲の国を警戒させる。そもそもそれは例えになっていないんだ」と指摘する——というシーンがありました。たしかにこの「国家戸締まり論」は、9条を守りたいと思っている人の「弱点」の一つになっていますね。
永井「家にも戸締まりが必要なように、国にも戸締まりが必要だ」と言われると、一瞬「なるほど」とか思ったりしそうになるんですよね(笑)。本当は「鍵で人は死なない」というところまで言わないと意味がないのに。例え話という古典的なトリックですね。
あとは「軍備を持たないというなら、あなたは道で暴漢に襲われても抵抗しないんですね」とかね。
編集部これについても、主人公の夫が「暴漢を他国の襲撃に例えるのなら、“暴漢に襲われるかもしれないから必ずナイフを携帯して、教われたら迷わず刺して、その暴漢の家も壊して、家族も殺しましょう”というところまで言わないと「軍備を持つ」ことの例えにならない。そもそも、他国が攻めてくる前には、必ず両国の関係が悪化する期間があるのだから、ある日突然襲いかかってくる強盗や暴漢に、国を例えること自体に無理がある」と指摘していました。
なかなか説得力がありますよね。ただしこのインタビューでは肝腎の「もし北朝鮮が攻めてきたらどうするんだ」という質問の答えは出てきません。私はこの「9条は守りたいのに口ベタなあなたへ…」は観ていませんので劇中でその答えが語られたどうかも分かりません。それならと永井さんの仰っているいわゆる「いいとこ取り」を自分でしてみようとネットで少し調べてみました。
マスコミ9条の会の梅田正己氏のコラムやとだ九条の会の「北朝鮮脅威論」「中国脅威論」などへの反論(1)(2)などはある種の模範解答なのかも知れませんが、私には「通販生活」の斎藤駿氏によるJanJanの記事護憲派の課題:そろそろ、信念から戦略へがかなりの長文ですが、最も説得力を感じました。それにしてもやはり最後は良くも悪くもテレビですか。
同記事より引用
「テレビ・テレビ・テレビ テレビには どくがある。 たったひとつの テレビが 蝮のどくよりも よくきく」
「テレビか、集会か、それが問題だ。 テレビか、活字か、それが問題だ。 単純か、複雑か、それが問題だ。 なじみのある著名人が明快に語るか、なじみの薄い九条の会発起人が難解に語るか、 それも問題だ。」
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